虚を突かれたときほど人間びっくりするものだ。逆に鳥が飛んだからといって驚くものはいないだろう。
18日放送の『unknown』(テレビ朝日)だが、前情報も知らず本来は観る予定ではなかったのに…私はニワトリが飛ぶ姿を観たのかもしれない。
あ、いや…たぶん言い過ぎだな(笑)ネット上では「こんなへんてこなドラマ…」「期待はずれ」「設定が意味不明すぎる」などと酷評が多かったもんね。
しかし私的には、次回以降も視聴しようかなリストには載った。酷評ドラマなのになぜか?自分でも驚いたので…ここに書き出してみたい。

コメディタッチだからこその旨味
私のルーティーンでは、21時は『水曜どうでしょう』を観る時間である。が、この日のCS放送は録画予約しているし…TVKで放送されるのは「未公開VTR&NG集」であんまり気分が乗らないがための僥倖である。
『unknown』は田中圭と高畑充希の主演ドラマである。製作陣は『おっさんずラブ』を作ったチームで、田中圭をはじめ吉田鋼太郎なども出演されています。
序盤はすこぶるコメディドラマだったのだが…話が進むにつれてシリアス展開に。ネット上では「色んな要素詰め込み過ぎ」「これって面白くなるのでしょうか?」と心配する声も見られたが…果たしてどうなるか?
初回ざっくりあらすじ
これは個人的な趣味の範囲だと思うが…これほどコメディタッチだとスルッと視聴できるのに若干驚いた。割とシリアス展開の方が好きだったような気もするのだが…年のせい?
ほんとに『unknown』の序盤はラブコメ&コメディテイストで展開する。高畑充希演じる闇原こころの住んでいる部屋に、泥酔した田中圭演じる朝田虎松が乗り込んできて、実はこころが住んでいるマンションには以前虎松が結婚して住んでいたそうだ(今は離婚して引っ越し済み)。
田中の泥酔シーンはかなりリアリティがあるなぁ~などと思うのは、若干意地悪だろうか(笑)まぁ詳しく書いていると文字数がアレなので…気になる人は各自に調べるよろし。
その後すったもんだが(以下略)で…お互いに付き合うようになり、無事付き合ってから1周年となったようだ。そろそろプロポーズの時期なんじゃないの?と周囲から突かれるような時期である。
だがお互いに何故か乗り気ではない。それもそのはずで、こころは…なんと吸血鬼だったのです!うむ、すごい設定だ(笑)
そうこうしているうちに、近所の駄菓子屋さんで火事が発生。その中にはおばあちゃんが一人取り残され、交番勤務の虎松が乗り込んで無事救出…ではなく、まさかのタンスの下敷きになりあえなくTHEエンドかと思われたところに、こころ登場!
吸血鬼は怪力の持ち主のようで、軽くタンスを持ち上げ虎松を抱き抱え救出に成功する。その勢いでこころは吸血鬼だとカミングアウトするのだが…虎松は拒否することなく受け入れ、その後にはプロポーズにも成功した。
とまぁ第一話はこんな感じで進行した。書いてて改めて思うが…トンデモ展開と言われても不思議ではない(笑)
だが、表面的にはコメディに見えても、その実結構重めのテーマが隠されていると思うのだ。そこに私は大いに惹かれた。
少数派が生きにくい世界線…
そもそもの設定である高畑充希=闇原こころ=吸血鬼設定。一見トンデモ設定なのだが…この裏には多様性の世界にあるマイノリティのメタファーではないだろうか。
この闇原こころは吸血鬼として人間社会で過ごしている。学校にも通い、今では会社に勤めて立派に働いているのだ。
しかし、どうしても吸血鬼としての性が顔を出してしまう。例えば血液を摂取する必要があるので水筒に入れて持ち歩いていたり、その水筒を飲みたいと言った同級生を軽く払ったら怪力すぎて突き飛ばしてしまったり、ニンニクに弱いため善意でもらったニンニクを食べ吐き出したり…と言った具合である。
誠に吸血鬼としては生きにくい世界なのだが、こころ側からしたら普通のことなのだ。こころにも家族がいる。その中で興味深い話があった。
「吸血鬼ってさ怖いイメージを持たれてるのよ。急に襲ったり血を吸われたり…」なんて具合に話すこころに、母・闇原伊織(麻生久美子)が「人間だってステーキが好きだからって牛に噛みついたりしないよねぇ(笑)」「私たちだって血液の産地や鮮度にはこだわりたいのよね。良い物をネットで買うし。」と答えたあたりが実に人間味が溢れており良いのだ。(会話は筆者のうろ覚えなので悪しからず)
カミングアウトしようにも、相手の反応が気になり決心できない…嫌われたくない…。そんなことをこころは考え、結婚には乗り気になれなかったのだ。これはまさしくマイノリティの境地ではないだろうか。
多様性が叫ばれる昨今とはいえ、やはり本人も受け取った側にも『覚悟』が必要なのは避けられないのかもしれない。
あと、あくまで個人的に引っかかったのは…「そろそろプロポーズの時期なんじゃないの?」と周囲が突くシーンである。いるんだよねぇ~そういう後押ししているつもりで余計なお世話をする人。本人は良いことしていると思っているだけにタチが悪い。
田中圭にも隠された秘密が?
がっちりシリアス展開のドラマを気取っているのに、なんかアラが目立ってコメディに見えちゃうドラマにはもんにょりするが…最近ではその楽しみ方を掴んできた。なんのドラマだかはあえて言わない(笑)
だからこそ、コメディタッチなのに裏には重いテーマがあった『unknown』は、笑いながらも実に興味深く視聴することができた。
いや…重いテーマだからこそ入り口は軽いコメディタッチの方が良いのかもしれない。ネット上の否定的な意見を見るに万人受けは難しいだろうが、比較的門戸は広く取れるだろうし広範囲に問題提起できるポテンシャルは狙えるだろう。
第1話の冒頭と最後に描かれ、そして公式ホームページには…
降りしきる雨、走ってくる男性。その姿は必死に誰かを探しているようで…。
テレビ朝日『unknown』公式サイトより
地面に倒れて動かないウエディングドレス姿の女性。その血まみれの手には結婚指輪が――。
倒れているのはこころ?走っているのは?徐々に明らかになっていくであろう謎も、現時点では影も形も見えない。引き続き視聴していきたい!
各話感想一覧
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自説「連続殺人犯=加賀美」が立証されたかに思えたのも束の間…まさかの大どんでん返しが待っていた。それにしても意外すぎる犯人で、にわかに信じがたい。というよりも、私にとっては真犯人より真犯人らしい人物が浮上したのだが… -
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これまでの「宗像一家殺人犯=虎松」説が覆りそうな展開に戦々恐々も、よくよく考えれば瓦解してはいない。と言うよりも、更なる補強要素が見えてきたので…私の持説は変わらず「宗像一家殺人犯=虎松」「連続殺人犯=加賀美」でいく。 -
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これまでの「虎松=殺人犯」説はかなり確定路線と思われるが、「南十字=連続殺人犯」説は修正し「加賀美=連続殺人犯」とさせていただく。そう思った理由が今話でさまざま出てきたので、振り返りつつ私の推論を聞いてほしい。 -
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前回打ち出した「虎松=殺人鬼」説がかなり補強された気がする第4話。それには公式が出すヒントの信憑性を考えなければならないが…まずは信じてみようじゃないか!そうなると「連続殺人鬼」の予想もある程度立つだろう。 -
私の予想は「虎松=殺人鬼」だ!『unknown』第3話で虎松の過去が明らかになるも…その程度ではつまらない!
ポスタービジュアル「女性=唇、男性=瞳」が赤いことから推察した前回。一瞬私の推察は外れたか…と思ったが、今回新たに提示された情報を精査し新たな推察が成り立ったものの、前回の推察を超えたショッキングなものになってしまった。 -
【ドラマレビュー】『unknown』第2話は進展なくてつまらない。前半5分と後半5分だけ観れば良いかも?
正直「あ、観るの忘れちゃった…」ってなっても平気なくらい進展がなかったように思うので、安心してください(笑)でもちゃんと次回以降気になるような作りで、考察もはかどって私的には楽しいのだが…視聴率は苦戦必至? -
『unknown』コメディ過ぎて「つまらない」と批判たっぷりも…社会問題に切り込むにはちょうど良い塩梅!
初めは観るつもりではなかった『unknown』。コメディ調の演出には批判が多く「視聴打ち切りだな」なんて声もあったが、私は観れば観るほど引き込まれるものがあった。その理由は…コメディの皮を被った社会派ドラマに思えたから?
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